ごあいさつ

 本プロジェクトは平成14年度より文部科学省の新世紀重点研究創生プラン(RR2002)として開始された「ナショナルバイオリソースプロジェクト」の一翼を担うもので、人類の福祉の向上に貢献する医学・生命科学研究に必要なマカクザル、とくにニホンザルを繁殖して研究者に供給する体制の整備を目指しています。

 マカクザルは、ヒトとの近縁性の高さから、高次脳機能、感染症・免疫学、再生医療などの医学・生命科学の基礎的研究、またはトランスレーショナル・リサーチに不可欠のモデル動物として世界中で用いられています。 日本固有種であるニホンザルは、日本の脳科学研究を支える有用な研究用リソースです。とくに、これまで記憶、学習、注意、情動、意識、脳内イメージの形成などのヒトの高次脳機能や、感覚、運動制御のメカニズムを調べ、様々な精神神経疾患や脳・脊髄損傷の治療法の開発につなげるための研究に用いられてきました。このような脳機能を調べるための行動課題を習得させ、そのような課題を遂行している際の脳の様々な部位の働きを調べる研究が盛んに行われてきました。また、脳損傷や脊髄の部分損傷後に残存する神経経路を使って機能を回復させる神経リハビリテーションの基礎研究にも用いられてきます。これらの成果はNatureやScienceをはじめとする最先端の研究成果が発表される科学誌に数多くの論文として発表されてきました。ニホンザルは学習能力が高く、好奇心旺盛で穏やかな気質を持っているので、研究用の動物として大変適した特性を有しています。一方で島国に長く隔離されて暮らしてきたためか他種マカクザルに比べて遺伝変異性が低いという点、さらに多くの日本人研究者の手によってなされた行動学、生態学、遺伝学、形態学などの多様な分野の文献の蓄積があるという点も研究用動物として大きな利点です。

 本プロジェクトでは第1期、第2期の10年間、ニホンザルを飼育下で大規模繁殖し、研究者が個体に関するデータ(家系、年齢、成育過程の記録など)にアクセスでき、病原微生物学的にも安全な状態で安定供給できる体制を整備してきました。さらに重要な研究のパートナーであるサルたちが不要なストレス、苦痛を感じることのないよう、研究施設での飼育環境改善、動物福祉向上に努め、またサルを用いた研究の意義について、広く国民の皆様にご理解を頂けるよう、広報活動にも力を入れてまいりました。

 第3期を迎えるにあたり、ゲノム情報の解析など、最新の研究成果を取り入れつつ、実験用動物としてのニホンザルの価値をさらに高める努力を続けることで、日本から発信される研究成果の質を一層高め、医学・生命科学研究の発展に寄与することを目指していく所存です。

 このホームページを通じて、より多くの方々に私共のプロジェクトの意義をご理解頂けますことを心より願っております。


平成24年4月 NBRP第3期開始によせて  
「ニホンザル」バイオリソース運営委員会  
副委員長・代表機関課題管理者  伊佐 正
(自然科学研究機構 生理学研究所 教授)